コラム

第八回目の専門家コラムは、日本税制研究所の代表理事であり、税理士法人アクト22の代表社員である朝長英樹先生に執筆していただきました。朝長先生の略歴を文末に掲載させていただきます。
今回のコラムにおいては、組織再編税制における、「完全支配関係」の解釈について、纏めていただいております。ご参考にしていただければ幸甚です。

なお、本コラムへのご質問やお問合せは弊社までご連絡下さい。
電子メール:info@amidaspartners.com ※全角「@」を、半角「@」に置き換えて、送信してください。

「いずれか一方の法人による完全支配関係」・「同一の者による完全支配関係」をどのように解釈するか
日本税制研究所 代表理事 税理士法人 アクト22 代表社員 朝長 英樹
2010/7/15

1.「いずれか一方の法人による完全支配関係」・「同一の者による完全支配関係」の解釈の疑問

 法人税法2条において平成22年度改正で新たに定義された「完全支配関係」に関しては、「支配関係」と同様に、その用語を用いた規定をどのように解釈するのか、という疑問の声が聞かれます。

 このため、適格合併の要件について定めた法人税法2条12号の8イとその政令委任規定である法人税法施行令4条の3第2項の例で、「いずれか一方の法人による完全支配関係」と「同一の者による完全支配関係」をどのように解釈すればよいのかということを検討してみましょう。

 なお、本稿における主題と直接に関係するものではありませんが、平成22年度改正は、従前とは異なり、「資本関係」と「支配関係」を区別せずに制度設計を行っていると解される状態にありますが、本来は、「資本関係」を「支配関係」と同義に捉えるのではなく、従前どおり、一番外枠の「資本関係」の中に存在するすべての法人を「支配関係」にある法人として同様に捉えるべきである、ということを付言しておきたいと考えます。

2.「いずれか一方の法人による完全支配関係」の解釈

 法人税法施行令4条の3第2項1号の「いずれか一方の法人による完全支配関係」ですが、このような規定を正しく解釈するためには、定義語である「完全支配関係」を元の正確な規定に戻した上で、その文言を精読する必要があります。

 このため、この「完全支配関係」について定めた法人税法2条12号の7の6を用いて元の正確な規定に戻した文章を作ってみると、次のようになります。

  •  「いずれか一方の法人による一の者が法人の発行済株式等の全部を直接若しくは間接に保有する関係として政令で定める関係(以下この号において「当事者間の完全支配の関係」という。)又は一の者との間に当事者間の完全支配の関係がある法人相互の関係」(網掛け部分は法人税法2条12号の7の6の抜粋)


 この文章を読んでみると、「いずれか一方の法人による」という部分が「政令で定める関係」又は「法人相互の関係」と続く文章となっていることが分かりますので、次に、この「政令で定める関係」を法人税法施行令4条の2第2項を用いて正確な規定にして文章を作ってみると、次のようになります。

  •  「いずれか一方の法人による一の者(その者が個人である場合には、その者及びこれと前条第一項に規定する特殊の関係のある個人)が法人の発行済株式等(発行済株式(自己が有する自己の株式を除く。)の総数のうちに次に掲げる株式の数を合計した数の占める割合が百分の五に満たない場合の当該株式を除く。以下この項において同じ。)の全部を保有する場合における当該一の者と当該法人との間の関係(以下この項において「直接完全支配関係」という。)」(網掛け部分は法人税法施行令4条の2第2項の抜粋)


 これを読むと、「いずれか一方の法人による」という部分に正しく文章が繋がらないことが分かります。

  • <参考>
    平成22年度改正前は、上記の例に対応する部分は、旧法人税法2条12号の8イ及び旧法人税法施行令4条の2第2項1号に次のように定められており、文章の適否等が問題になるような規定とはなっていませんでした。

    「いずれか一方の法人が他方の法人の発行済株式等の全部を直接又は間接に保有する関係その他の政令で定める関係」(旧法法2十二の八イ)
    「政令で定める関係は、次に掲げるいずれかの関係とする。
    • 一 合併に係る被合併法人と合併法人(省略)との間にいずれか一方の法人が他方の法人の発行済株式等の全部を直接又は間接に保有する関係がある場合における当該関係(次号に掲げる関係に該当するものを除く。)」

 法令の規定が上記のような状態となっているとしても、これをどのように解釈するのかということには必ず答を出さなければならないわけですから、何らかの方法によって妥当と考えられる解釈を探る必要があります。

 この際に参考となるのは、やはり立法者がどのように考えてこの規定を作ったのかということになると考えられます。

 いずれの法令も同様ですが、法令の規定が常に完全であるとは限らず、このように、法令の規定に立法者の意図するところを勘案して解釈をするべき部分が生じてくることも、稀ではありません。

 平成22年度の「支配関係」や「完全支配関係」に関する改正の立法者の改正説明等からすると、上記の部分については、合併の当事者である法人に直接又は間接に100%の資本関係がある場合のその双方の法人の関係を「完全支配関係」と捉えることとしているものと考えられますので、文理に拘らず、そのように解釈するのが適当であろうと考えます。

 また、「完全支配関係」は「一の者との間に当事者間の完全支配の関係がある法人相互の関係」(法法2十二の七の六)でもありますので、上記の法人税法施行令4条3第2項1号の「いずれか一方の法人による完全支配関係」は、「いずれか一方の法人による一の者との間に当事者間の完全支配の関係がある法人相互の関係」(網掛け部分は法人税法2条12号の7の6の抜粋)ともなるわけですが、「いずれか一方の法人による」という部分に「一の者との間に当事者間の完全支配の関係がある法人相互の関係」が正しい文章として繋がらないことは明らかですので、いわゆる「空振り」というわけではありませんが、それと同様に捉えるのが適当であると考えます。

3.「同一の者による完全支配関係」の解釈

 「同一の者による完全支配関係」に関しては、詳細は省略することとしますが、上記の「いずれか一方の法人による完全支配関係」とやや事情が異なります。

 「同一の者による完全支配関係」に関しては、「一の者が法人の発行済株式等の全部を直接若しくは間接に保有する関係として政令で定める関係(以下この号において「当事者間の完全支配の関係」という。)又は一の者との間に当事者間の完全支配の関係がある法人相互の関係」の前半部分の「一の者が法人の発行済株式等の全部を直接若しくは間接に保有する関係として政令で定める関係」は「空振り」と同様の状態にあると捉えるのが適当であると考えます。

執筆者紹介

略歴

1982年4月
東京国税局入局
1982年4月-1995年7月
成田・京橋税務署、東京国税局調査部において、主に法人税調査・審理に従事
1995年7月-2003年7月
財務省主税局において、金融取引に係る法人税制の改正(2000年)、組織再編成税制の創設(2001年)、連結納税制度の創設(2002年)などの改正を主導
2003年7月-2006年7月
税務大学校勤務、税務大学校教授を最後に退官
2007年3月-
日本税制研究所代表理事
2011年4月-
朝長英樹税理士事務所所長

主な著書

「企業組織再編成に係る税制についての講演録集」日本租税研究協会
「日本型連結納税制度の基本的な考え方と法令等の概要」日本租税研究協会
「公益法人税制」法令出版(共著)
「精説 公益法人の税務」公益法人協会(共著)
「リース税制」法令出版(編著)
「国際的二重課税排除の制度と実務 -外国税額控除制度・外国子会社配当等益金不算入制度-」法令出版(編著)
「会社合併実務必携」法令出版(共著)
「グループ法人税制」法令出版(編著)
「外国子会社合算税制(タックス・ヘイブン対策税制)」法令出版(編著)
「連結納税制度」法令出版(編著)
「組織再編成をめぐる包括否認と税務訴訟」清文社(編著)
「会社分割実務必携」法令出版(編著)
「株式交換・株式移転 実務必携」法令出版(編著)
「解散・清算 実務必携」法令出版(編著)

関連コラム

最新コラム

アミダスパートナーズについて
お問い合わせ