コラム

第112回目の専門家コラムは、司法書士法人鈴木事務所の代表社員であり、司法書士及び行政書士である鈴木龍介先生に執筆していただきました。鈴木先生の略歴を文末に掲載させていただきます。今回のコラムにおいては、近時の民事法制の動向をいくつかの法律を例に挙げて、ご解説いただいております。ご参考にしていただければ幸甚です。

なお、本コラムへのご質問やお問合せは弊社までご連絡下さい。
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近時の民事法制の動向
司法書士法人鈴木事務所
司法書士 鈴木 龍介
2019/6/14

1.はじめに

 近時、M&Aや事業再生・承継の実務のベースとなる民法等の基本となる法律の改正や検討が目白押しであり、それらの情報を適時的確に把握し、対応を検討しておくことは重要であるといえる。

 そこで、本稿では民事法制の動きについて、ガイダンス的に整理し、あわせて信頼性が高いと思われるインターネット情報*1や文献を紹介することとする。なお、本稿の内容は、あくまで本稿執筆時点(令和元(2019)年6月1日)の情報等に基づくものであるとともに、現在、第198回通常国会(以下、「今国会」という。)が会期中であることから、この後に進展があることに留意し、最新の情報等へのアップデイトに努めていただきたい。

*1 本稿におけるインターネット情報の最終アクセス日は、令和元(2019)年5月31日である。

2.施行(一部施行を含む)された法律

(1) 商法*2

 「商法及び国際海上物品運送法の一部を改正する法律」(平成30年法律29号)が、平成30(2018)年5月18日に成立、同年5月25日に公布され、平成31(2019)年4月1日から施行された。

 本改正は、商法のうち運送・海商法制の分野の明治32(1899)年の商法制定以来の抜本的な見直しであり、陸上・海上・航空に関する運送実務において影響の大きいものといえる。あわせて、これまでカタ仮名文語体であった表記が全面的にひら仮名口語体に改められ、これにより、いわゆる六法はすべて現代語化されたことになる。

(2) 所有者不明土地特措法*3

 社会問題化している所有者不明土地への対応の一環として「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」(平成30年法律49号)が平成30(2018)年6月 6日に成立、同年6月13日に公布され、法務省所管部分については同年11月15日に施行され、国土交通省所管部分については令和元(2019)年6月1日に施行された。

 本改正では、不動産登記法の特例として登記官の職権による法定相続人調査に基づく相続登記申請の勧告や、民法の特例として地方公共団体の長による財産管理人の選任申立などに関する規定が設けられている。

(3) 民法(相続関係)*4

 いわゆる相続法改正と称される「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」(平成30年法律72号)と「法務局における遺言書の保管等に関する法律」(平成30年法律73号)が、平成30(2018)年7月6日に成立、同年7月13日に公布され、原則的には令和元(2019)年7月1日から施行となる。ただし、自筆証書遺言の方式緩和の部分については平成31(2019)年1月13日に施行された。一方、周知と事務準備の関係で、配偶者居住権の部分については令和2(2020)年4月1日に、「法務局における遺言書の保管等に関する法律」については令和2(2020)年7月10日に施行される。

 本改正は、昭和55年以来の相続分野の大きな見直しであり、改正事項も多岐にわたるものであるが、①配偶者居住権の創設、②自筆証書遺言の方式緩和と保管制度の創設、③遺言執行者の権限の明確化、④遺留分減殺請求から遺留分侵害額請求への転換が重要論点としてあげられる。

*2 法務省「商法及び国際海上物品運送法の一部を改正する法律について」
 http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00219.html
 松井信憲=大野晃宏『一問一答 平成30年商法改正』(商事法務、2018年)
*3 国土交通省「所有者不明土地問題に関する最近の取組について」
 http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk2_000099.html
 法務局「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法について」
 http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000022.html
*4 法務省「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)」
 http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00222.html
 法務省「法務局における遺言書の保管等に関する法律について」
 http://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html
 堂園幹一郎=野口宣大『一問一答 新しい相続法』(商事法務、2019年) 

3.成立(未施行)した法律

(1) 民法(債権関係)*5

 いわゆる債権法改正と称される「民法の一部を改正する法律」(平成29年法律44号)が、平成29(2017)年5月29日に成立、同年6月2日に公布され、一部の例外を除き令和2(2020)年4月1日から施行となる。

 本改正は、民法制定以来の債権関係分野の抜本的な見直しであり、改正事項は多岐にわたるが、とりわけ①消滅時効、②法定利率、③保証、④債権譲渡、⑤定型約款が重要論点としてあげられる。

(2) 民法(成年年齢関係)*6

 成年年齢を20歳から18歳に引き下げること等を内容とする「民法の一部を改正する法律」(平成30年法律59号)が平成30(2018)年6月13日に成立、同年6月20日に公布され、令和4(2022)年4月1日から施行となる。

 民法の定める成年年齢には、単独で契約を締結することができる年齢という意味と、親権に服することがなくなる年齢という意味を持つものであり、本改正は、一般的な契約実務全般のほか遺産分割等の親子間の利益相反取引に関する実務にも影響を及ぼすことになる。

(3) 民事執行法等*7

 今国会において、「民事執行法及び国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律の一部を改正する法律」(令和元年法律2号)が令和元(2019)年5月10日に成立、同年5月17日に公布され、原則として公布の日から1年以内に施行される。

 本改正では、①債務者財産の開示制度の実効性の向上、②不動産競売における暴力団排除の方策、③国内外の子の引渡し等の強制執行に関する規律の明確化が重要論点としてあげられる。

(4) 変則型登記解消特例法*8

 今国会において、「表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律」(令和元年法律15号)が令和元(2019)年5月17日に成立、同年5月24日に公布され、原則として公布の日から6か月以内に施行される。

 本改正では、所有権の登記がない一筆の土地のうち表題部に所有者の氏名や住所の全部または一部が登記されていないものの登記と管理の適正化を図るため、登記官による表題部に登記すべき所有者の探索や探索不能であったものについての裁判所が選任する管理者による管理等の措置が規定されている。

*5 法務省「民法の一部を改正する法律(債権法改正)について」
 http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_001070000.html
 筒井健夫=村松秀樹『一問一答 民法(債権関係)改正』(商事法務、2018年)
*6 法務省「民法の一部を改正する法律(成年年齢関係)について」
 http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00218.html
 笹井朋昭=木村太郎『一問一答 成年年齢引下げ』(商事法務、2019年)
*7 法務省「民事執行法及び国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律の一部を改正する法律について」
 http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00247.html
*8 法務局「表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律について」
 http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000027.html

4.審議・検討中の法律等

(1) 会社法*9

 会社法の見直しについては、法制審議会「会社法制(企業統治等関係)部会」での検討を踏まえ、平成31(2019)年2月に「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する要綱」が法務大臣に答申された。

 当該要綱には、①株主総会資料の電子提供制度の見直し、②株主提案制度の濫用防止のための手当、③取締役の報酬等の決定の見直し、④社外取締役設置の義務付け、⑤M&A等における株式交付制度の新設などが示されている。

 今国会での改正法案の提出は見送られたことから、次期国会への提出が見込まれる。

(2) 民法(不動産登記等関係)*10

 前述2、(2)所有者不明土地特措法および4、(4)変則型登記解消特例法に続き、所有者不明土地の解消を企図した民法・不動産登記法の見直しを行うため、平成31(2019)年2月の法務大臣から法制審議会への諮問(諮問107号)に対し、「民法・不動産登記法部会」が組成、審議が開始された。

 具体的には、所有者不明土地の発生を予防するための仕組みに関するものとして①相続登記申請の義務化、②所有権の放棄、③遺産分割の期間制限などが、所有者不明土地を円滑かつ適正に利用するための仕組みに関するものとして④財産管理制度、⑤共有制度、⑥相隣関係規定の見直しなどが検討される模様である。

(3) 民法(動産・債権担保関係)*11

 近年、不動産担保や人的担保に過度に依存しない融資を促進する必要性が指摘されている中、在庫などの動産や売掛債権などの債権を担保の目的として活用することが期待されている。

 そこで、①譲渡担保に関する基本的な判例法理を明文化すること、②動産・債権担保に関する法律関係を明確にして予測可能性を高めること、③動産・債権担保に関する法制度をより合理的なものにすることなどを検討するため、「動産・債権を中心とした担保法制に関する研究会」が平成31(2019)年3月に立ち上がり、議論が開始された。

*9 法務省「法制審議会-会社法制(企業統治等関係)部会」
 http://www.moj.go.jp/shingi1/housei02_00297.html
 神田秀樹「「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する要綱案」の解説 Ⅰ~Ⅷ」商事法務2191号~2198号
*10 法務省「法制審議会-民法・不動産登記法部会」
 http://www.moj.go.jp/shingi1/housei02_00300.html
*11 商事法務研究会「動産・債権を中心とした担保法制に関する研究会」
 https://www.shojihomu.or.jp/kenkyuu/dou-tanpohousei
 なお、同研究会は私的な会合とされているが、そのメンバーとして法務省や最高裁判所も参画している。

執筆者紹介

主な役職等

日本司法書士会連合会 民事法改正対策部 部委員
日本司法書士会連合会 動産・債権譲渡登記推進委員会 委員長
リスクモンスター株式会社(東証二部上場)社外取締役(監査等委員)
慶應義塾大学大学院 法務研究科 非常勤講師
立教大学大学院 法学研究科 兼任講師
税務大学校 講師
日本登記法学会 理事

主な著書

『与信管理入門(新版)』(共著、金融財政事情研究会、2019年)
『商業・法人登記360問』(編著、テイハン、2018年)
『民法改正 ここだけ押さえよう!』(共著、中央経済社、2018年)
『議事録作成の実務と実践』(編著、第一法規、2017年)
『外国会社のためのインバウンド法務』(編著、商事法務、2016年)
『法人・組合と法定公告』(編著、全国官報販売協同組合 2014年) など多数

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