コラム

第123回目の専門家コラムは、弊社による親子上場のコラムです。今回のコラムにおいては、昨今議論となっている親子上場について、最近の動向や事例を踏まえて、親子上場を取り巻く議論、親子上場の利点や問題点、親子上場の在り方や今後に関して考察しております。ご参考にしていただければ幸甚です。

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親子上場の在り方と今後
アミダスパートナーズ
2020/6/15

 企業のコーポレート・ガバナンス改革の一環として注目を集めているのが親子上場である。直近でも、ソニーが上場子会社のソニーフィナンシャルホールディングスのTOBによる完全子会社化を発表し注目を集めた。本稿では、我が国における親子上場を取り巻く議論を紹介し、親子上場の利点や問題点、親子上場の在り方について考察する。

1. 親子上場を取り巻く議論

 親子上場をめぐる議論が活発になっている。2019年6月21日に政府が閣議決定し、公表した成長戦略実行計画のなかで、親子上場について「特に、支配的な親会社が存在する上場子会社のガバナンスについては、投資家から見て、手つかずのまま残されているとの批判があり、日本市場の信頼性が損なわれるおそれがある」とし、独立社外取締役の選任や親会社の説明責任について、改善の方向が示された。経済産業省の「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針」、金融庁の「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」の意見書、上場子会社に関するガバナンスの在り方でも同様に親子上場の問題が取り上げられている。

 親子上場が注目される背景にあるのは、諸外国と比較した際のその比率の高さである。以下図を見ると諸外国と比較して、我が国の親子上場の比率が際立って高い事が確認できる。この点が我が国の資本市場の特異性となっており、親子上場の議論が活発化しているのである。


経済産業省 上場子会社に関するガバナンスの在り方[2020]

2. 親子上場での利点や問題点

 親子上場が問題視されている理由として主に以下が考えられる。

 第一に、親会社株主と子会社少数株主間の構造的利益相反である。例としては、親会社が商品の売買、不動産、資金の貸借において、親会社に有利な価格や金利で取引をする事が挙げられる。

 第二に、上場維持コストの問題である。上述した利益相反が構造的に存在するため、それを防ぐため、親子上場をしていない上場企業よりも厳格なガバナンス体制の構築や情報開示が必要になる。また、親会社と子会社両社が上場維持コストを支払っている。この様な点から通常の上場企業よりも、上場に係るコストの負担が大きくなると考えられる。

 第三に、グループ単位の資源の有効活用についてである。親会社からすれば、グループ全体戦略のもとで、子会社の運営方針及びリソースの有効活用を取り決めていきたい思いがあるが、上場子会社での経営方針や経営戦略次第では、グループとして最適な戦略実行、資源配分が阻害される可能性がある。(下図調査結果参照)

 第四に、上場親会社から見た利益の流出である。上場子会社の収益力が高い場合に、少数株主の持分だけ利益が上場親会社グループ以外に流出するので、中長期的に上場子会社を100%化した方が定量的なメリットが高いと考えられる。


経済産業省 上場会社に関するガバナンスの在り方[2020]

 では、親子上場は問題ばかりなのだろうか。親子上場の主な利点としては以下が挙げられる。

 第一に、親子上場が大企業内の事業の育成に際して、大きな役割を果たしてきた点である。トヨタ自動車、NTTドコモ、オリエンタルランド、東京エレクトロンなど、上場時に親子上場であった有力企業が多数存在している。上場後、子会社では上場による資金調達で成長を加速し、また、親会社では子会社の上場により投資資金の回収を行ってきた歴史がある。

 第二に、コングロマリット・ディスカウントの解消である。企業が多角化すると、一つ一つの事業が分かりにくくなり、評価し辛いため、企業全体の価値が、企業の各事業体の価値の合計よりも低く評価されることがある。これをコングロマリット・ディスカウントという。
 複数の事業を行う企業グループ内の一つの事業体(子会社)が上場する事により、当該事業体に関する情報開示が進む。その結果として企業グループ(親会社)のコングロマリット・ディスカウントは解消され、子会社も自らの客観的な評価を得ることが出来るのである。

 以上、親子上場の問題点、利点を整理した。最後に、親子上場の在り方や今後について議論を進めたい。

3. 親子上場の在り方や今後

 国や東証でのコーポレート・ガバナンスに対する改革の推進に加えて、昨今の機関投資家をはじめとする株主による企業へのモニタリング意識の向上を考えると、親子上場の在り方や今後について、各企業においても一度、議論がなされるべきと考えられる。

 親会社においては、上場子会社のグループでの位置づけを整理すべきである。当該上場子会社がグループにおける成長事業、注力事業であれば、グループ一体での経営の強化や利益の取り込みのため、完全子会社化は検討に値するものと考えられる。また、当該上場子会社がノンコア事業に該当すれば、市場での保有株式の売却による親子関係の解消や戦略パートナーへの売却が想定される。親会社においては当該売却による資金を成長事業、新規事業に投資することにより、自社グループの成長・企業価値向上を見込むことができる。

 なお、直近の事例としては、前者ではソニーによる上場子会社のソニーフィナンシャルホールディングスの完全子会社化、東芝による上場子会社3社の完全子会社化、三菱ケミカルHDによる田辺三菱製薬の完全子会社化、後者では日立製作所による日立化成の昭和電工への売却が挙げられる。

 また、上場子会社においては、独立取締役の選任、情報開示の強化など、構造的利益相反への対策がより一層求められていくと考えられる。その中で、親会社やグループ会社との相乗効果やグループ内での位置づけを整理し、自社の経営方針や経営戦略を踏まえて、自社の今後の在り方・将来像について、親会社と対話していくことが必要である。

【出典】
経済産業省 上場子会社に関するガバナンスの在り方[2020]

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