コラム

第十八回目の専門家コラムは、日本税制研究所の代表理事であり、税理士である朝長英樹先生に執筆していただきました。朝長先生の略歴を文末に掲載させていただきます。
今回のコラムにおいては、組織再編成・資本等取引と更正の期間制限についてとりまとめて頂いています。ご参考にしていただければ幸甚です。

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組織再編成・資本等取引と更正の期間制限
日本税制研究所
代表理事/税理士 朝長英樹
2011/5/15

1.更正等と受入れの関係

 法人が法人税の税務調査を受けた場合には、その税務調査の結果に応じて、過去の事業年度の更正が行われたり、過去の事業年度の修正申告を求められたりすることとなるわけですが、基本的には、過少申告加算税の対象のみの場合には過去の5期について課税が行われ、重加算税の対象がある場合には過去の7期について課税が行われることとなります。これは、周知のとおり、法人税の更正に期間の制限があることによるものです。

 この更正の期間制限に関しては、更正が行われる期間及び将来の期間の法人税の申告において、更正が行われる期間前の過去の期間に生じた資産・負債・資本金等の額・利益積立金額を埒外に置いてよい、ということを意味するものではないという点に留意する必要があります。

 税務調査において、更正が行われる期間前の過去の期間に生じた資産・負債・資本金等の額・利益積立金額があることが判明した場合には、更正が行われる期間の最初の事業年度の利益積立金額・資本金等の額の明細書の期首にそれらの金額を記載して受け入れることとなります。

 更正が行われる期間前の過去の期間に生じた資産・負債・資本金等の額・利益積立金額であったとしても、それらが法人のものであることに変わりがあるわけではなく、更正によって所得に課税を行うということが行われないだけですから、このように、法人に受け入れることは、蓋し当然ということになります。

2.税務調査と納税者における事前準備

 現実の税務調査に目を向けてみると、更正が行われる期間前の過去の期間にまで遡って問題が確認されるといった事例は、あまり多くはないと思われます。これは、税務調査が、前回の税務調査後の期間を対象として行われることが多いことと、専ら更正が行われる期間内を対象として行われることに、その主な理由があると考えられます。

税務調査に関しては、このような現実があるため、納税者においても、税務調査があることが予測されていたり、税務調査の事前通知を受けた場合には、直前期の見直しに重点を置きつつ、前回の税務調査の対象となった期間の後の期間について見直しを行うといった例が多いものと思われます。

 納税者においては、税務調査に対する事前準備としては、通常、このようなもので済むことになっているものと想定されます。

3.組織再編成・資本等取引が税務調査の対象となる場合の特殊性

 通常は、税務調査に対する事前準備としては、上記2で述べたような対応で済むものと考えられますが、法人が過去に組織再編成や資本等取引を行っている場合には、往々にして、そのような対応では済まないことがあります。

 法人が10年前から交際費を会議費としていたという例(例1)と法人が10年前に合併によって被合併法人の資産及び負債の移転を受けたという例(例2)について考えてみましょう。

 例1においては、税務調査で会議費を交際費として損金算入限度超過額を所得金額に加算する必要があると指摘されたとすれば、更正ができる期間― 通常は5期―についてのみ、各期の所得金額にその損金算入限度超過額を加算する処理を行うこととなり、更正ができる期間前の過去の期間に関しては、特段の処理は行わないこととなります。

 これに対して、例2においては、かなり事情が異なることとなります。法人が10年前に行った合併に関して、その法人がその合併を適格合併として申告を行い、被合併法人の資産及び負債についてその帳場価額によって引継ぎを受けていたが、税務調査によって、その合併が非適格合併であったとされた、とします。

 そうすると、その法人においては、10年前の合併について、時価で被合併法人の資産及び負債を取得したものとされることとなります。この場合、合併が更正が行われる期間前に行われているため、適格合併として申告を行っていたものを非適格合併とすることによって生ずることとなる資産及び負債の譲渡益・譲渡損を所得金額に加算したり減算したりする処理が行われることはありません。

 しかし、法人は、10年前の合併が非適格合併であったということになれば、被合併法人の資産及び負債の取得価額を合併時の時価としなければならないこととなります。

 そして、法人がその資産及び負債を更正が行われる期間内に譲渡したり返済したりしていたとすれば、その法人には、その譲渡や返済について、被合併法人から引き継いだ帳簿価額に基づいて計算した所得金額を合併時の時価に基づいて計算した所得金額に是正する更正が必要となってくることになります。

 このような更正の結果がその譲渡や返済に係る当初の申告の所得金額を増加させるものとなるのか、あるいは、減少させるものとなるのかは、その資産及び負債の合併時の含み損益の状況によって異なることとなるわけですが、この例から分かるとおり、合併等の組織再編成や資本等取引に関しては、それらが法人の資産・負債・資本金等の額・利益積立金額という事業年度を越えて繰り越される項目に影響を与える関係上、更正が行われる期間内のものを考慮するだけでは済まないという特殊性があるわけです。

4.組織再編成・資本等取引への対応

 上記3で述べた特殊性は、改めて申し上げるまでもなく、組織再編成や資本等取引にのみ固有のものではなく、内部留保項目に関しては、同様の事情にあります。

 しかし、組織再編成や資本等取引に関しては、今後、税務調査において調査対象となる可能性が高く、また、問題となる金額が大きくなることが少なからず有ると想定されることからすると、他の内部留保項目とは異なり、特に留意することが必要となると考えられます。

 換言すれば、組織再編成や資本等取引に関しては、更正が行われる期間の経過に伴って税制上の問題が解消されることとなる一部のものを除き、長期にわたって税務調査においてその処理の適否が問題とされるおそれがある、ということになります。

 このことは、組織再編成や資本等取引に関しては、他の項目に対する以上に十分に注意して税務処理を行う必要があるということを意味しています。従来、組織再編成や資本等取引に関しては、税務調査において法人の処理を否認するといったことがほとんど行われてきていないために、これらを利用した「租税回避行為」と言わざるを得ないものも見受けられる状況となっていることからすると、この点は、非常に重要であると考えられます。

執筆者紹介

略歴

1982年4月
東京国税局入局
1982年4月-1995年7月
成田・京橋税務署、東京国税局調査部において、主に法人税調査・審理に従事
1995年7月-2003年7月
財務省主税局において、金融取引に係る法人税制の改正(2000年)、組織再編成税制の創設(2001年)、連結納税制度の創設(2002年)などの改正を主導
2003年7月-2006年7月
税務大学校勤務、税務大学校教授を最後に退官
2007年3月-
日本税制研究所代表理事
2011年4月-
朝長英樹税理士事務所所長

主な著書

「企業組織再編成に係る税制についての講演録集」日本租税研究協会
「日本型連結納税制度の基本的な考え方と法令等の概要」日本租税研究協会
「公益法人税制」法令出版(共著)
「精説 公益法人の税務」公益法人協会(共著)
「リース税制」法令出版(編著)
「国際的二重課税排除の制度と実務 -外国税額控除制度・外国子会社配当等益金不算入制度-」法令出版(編著)
「会社合併実務必携」法令出版(共著)
「グループ法人税制」法令出版(編著)
「外国子会社合算税制(タックス・ヘイブン対策税制)」法令出版(編著)
「連結納税制度」法令出版(編著)
「組織再編成をめぐる包括否認と税務訴訟」清文社(編著)
「会社分割実務必携」法令出版(編著)
「株式交換・株式移転 実務必携」法令出版(編著)
「解散・清算 実務必携」法令出版(編著)

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