コラム

第二十一回目の専門家コラムは、日本税制研究所の代表理事であり、税理士である朝長英樹先生に執筆していただきました。朝長先生の略歴を文末に掲載させていただきます。
今回のコラムにおいては資本金等の額・利益積立金額の法令の規定と申告書別表の関係について取りまとめていただいております。ご参考にしていただければ幸甚です。

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資本金等の額・利益積立金額の法令の規定と申告書別表の関係
日本税制研究所
代表理事/税理士 朝長英樹
2011/8/15

1.資本金等の額・利益積立金額の法令の規定の概要

 資本金等の額と利益積立金額について、法令の規定に従い、申告書別表において、これらの金額の処理を行うことに関しては、実務上、誤りは少ないものと思われますが、その場合の法令の規定と申告書別表の処理がどのような関係となっているのかということを正確に説明するのは容易ではないように思われます。

 まず、資本金等の額と利益積立金額の法令の規定がどのようになっているのかということを確認してみることとします。

  この「資本金等の額」は、平成22年度改正によってその性格が不明確になったことは否めないものの、本来的な性質は、「法人(省略)が株主等から出資を受けた金額」(法法2十八)ということになります。この「資本金等の額」は、平成18年度改正前は「資本の金額」と「資本積立金額」とに分けて規定されていました。

 この「資本の金額」に関しては、税法上、特にその内容に関する定めは設けられておらず、会社法等において「資本金」等とされている金額がそのまま税法上も「資本の金額」とされることとなっています。

 しかし、「資本の金額」以外で株主等から出資を受けた金額とする部分については、会社法等における金額と法人税法における金額とが一致するとは限らず、法人税法においては、独自に「資本積立金額」として定義を設けることとしていたわけです。

 平成13年度改正において、この「資本の金額」と「資本積立金額」とを合計した金額である「資本等の金額」は法人と株主等との間の取引(適格合併等による引継ぎを含む)がなければ変動させないことが明確化され、その後、平成18年度改正において、この「資本等の金額」が「資本金等の額」に呼称変更されて現在に至っています。

 「利益積立金額」に関しては、これも平成22年度改正によってその性格が不明確となったことは否めませんが、本来的な性質は、「法人(省略)の所得の金額(省略)で留保している金額」(法法2十八)ということになります。

 この「利益積立金額」も、上記の「資本積立金額」と同様に、会社法等における「剰余金」等と一致するわけではなく、独自に定義が設けられています。

2.資本金等の額・利益積立金額に係る申告書別表の構造

 資本金等の額と利益積立金額の計算に関しては、申告書別表五(一)において行うこととされていることは、周知のとおりです。

 資本金等の額に関しては、別表五(一)Ⅱにおいて、「資本金又は出資金」の計算を行うとともに、従来の「資本積立金額」に相当する金額の計算を行うこととされています。この別表五(一)Ⅱの構造は、法人税法における「資本金等の額」の計算の構造と同じです。

 このため、法人税法施行令8条1項各号に掲げられた資本金等の額の増減額がそのまま別表五(一)Ⅱに増減額として記載されることとなります。

 これに対して、別表五(一)Ⅰにおいて計算を行うこととされている利益積立金額は、法人税法における計算の構造をそのまま用いるのではなく、法人が行った企業会計上の処理を利用して計算することとされています。

 すなわち、企業会計上の「繰越利益」、「剰余金」等の金額を用いつつ、税務上の調整を加えて、計算を行うこととされているわけです。この企業会計上の金額を利用しつつ税務調整を加えるという構造は、申告書別表四において企業会計上の利益又は損失の額を利用しつつ税務調整を加えるという所得の金額の計算構造と平仄を合わせたものです。

 利益積立金額に関しては、このように、法令の規定の構造と申告書別表の計算構造とが異なっているため、法人税法施行令9条1項各号に掲げられた増減額がない場合であっても、別表五(一)Ⅰの処理が必要となることがあります。

3.処理例

 具体的な処理を利益剰余金の資本組入れの例で示すこととします。
 例えば、法人が繰越利益剰余金1,000を減少させて資本金1,000を増加させたとすると、企業会計上の処理は、次のとおりとなります。


 (借方)繰越利益剰余金 1,000 / (貸方)資 本 金 1,000


 この場合、法人税法上は、資本金等の額も利益積立金額も総額では変動しないこととなりますが、資本金の額が増加しているため、資本金等の額に関しては、その増加額を相殺する処理が必要となります。この資本金等の額の増加額を相殺する規定は、法人税法施行令8条1項13号となっており、同号によって1,000を減額することとなります。

 次に、上記の利益剰余金の資本組入れの場合の申告書別表の処理がどうなるのかということが問題となるわけですが、まずは、上記の仕訳の形態で示した金額を別表五(一)Ⅰ利益積立金額の計算に関する明細書の繰越損益金(26欄)と同Ⅱ資本金等の額の計算に関する明細書の資本金(32欄)に記載することが必要となります。

 そして、資本金等の額に関しては、上記のとおり、法人税法施行令8条1項13号の規定によって、1,000の減額を行うことが必要となり、また、利益積立金額に関しては、法令の規定上は何の増減もないこととなっていますが、別表五(一)Ⅰにおいて繰越損益金の欄(26欄)においてマイナス1,000が計上されるということになれば、別表五(一)Ⅰにおいてプラス1,000を計上してマイナス1,000を相殺し、総額において変動がない状態とする必要があります。

 要するに、資本金等の額に関しては、法令の規定どおりに別表を書けば良く、利益積立金額に関しては、総額を変動させないために、別表において独自の処理をしなければならないわけです。

 別表五(一)Ⅰにおいて、法令の規定には何の異動事項がないにもかかわらず、処理を行わなければならないこととなるのは、その別表五(一)Ⅰが繰越損益金や利益準備金などの企業会計上の留保利益に関する項目を利用して利益積立金額の計算を行うこととしているためです。別表五(一)Ⅰがこのような構造となっているのは、別表四において企業会計上の利益又は損失の額を利用し、これに税務調整を加えて所得の金額を計算することとしていることに平仄を合わせているためです。

 これに対して、別表五(一)Ⅱにおいて、法令の規定どおりに処理を行うこととなるのは、法令において企業会計上の「資本金」を用いて資本金等の額の定義を行っているためです。

 以上のとおり、別表五(一)Ⅰ及びⅡにおいては、上記において仕訳の形態で示した企業会計上の処理を記載するとともに、利益積立金額を増額し、資本金等の額を減額する処理を行わなければならないわけですが、この別表五(一)Ⅰ及びⅡにおける処理の全体像を仕訳の形態で示すと、次のとおりとなります。


 (借方)繰越利益剰余金 1,000 / (貸方)資 本 金  1,000
 (借方)資本金等の額  1,000 / (貸方)利益積立金額 1,000


 換言すれば、この下段の「資本金等の額」は、企業会計上で「資本金」を増加させた処理を打ち消す処理で、企業会計上の「資本金」(法令上は「資本の金額」)を用いて法令上で「資本金等の額」の定義を行っているために法令上でその処理を打ち消す規定を設けなければならないこととなっており、また、下段の「利益積立金額」は、別表上のみで企業会計上の「繰越利益剰余金」(別表上は「繰越損益金」)を用いて「利益積立金額」の計算を行っているために別表上のみで「繰越利益剰余金」の減少を打ち消す処理を行わなければならないこととなっているもの、ということになります。

 これらの処理は、別表五(一)Ⅰ及びⅡにおいて、次のように行うこととなります。

 Ⅰ 利益積立金額の計算に関する明細書
利益積立金額の計算に関する明細書

 Ⅱ 資本金等の額の計算に関する明細書
資本金等の額の計算に関する明細書

執筆者紹介

略歴

1982年4月
東京国税局入局
1982年4月-1995年7月
成田・京橋税務署、東京国税局調査部において、主に法人税調査・審理に従事
1995年7月-2003年7月
財務省主税局において、金融取引に係る法人税制の改正(2000年)、組織再編成税制の創設(2001年)、連結納税制度の創設(2002年)などの改正を主導
2003年7月-2006年7月
税務大学校勤務、税務大学校教授を最後に退官
2007年3月-
日本税制研究所代表理事
2011年4月-
朝長英樹税理士事務所所長

主な著書

「企業組織再編成に係る税制についての講演録集」日本租税研究協会
「日本型連結納税制度の基本的な考え方と法令等の概要」日本租税研究協会
「公益法人税制」法令出版(共著)
「精説 公益法人の税務」公益法人協会(共著)
「リース税制」法令出版(編著)
「国際的二重課税排除の制度と実務 -外国税額控除制度・外国子会社配当等益金不算入制度-」法令出版(編著)
「会社合併実務必携」法令出版(共著)
「グループ法人税制」法令出版(編著)
「外国子会社合算税制(タックス・ヘイブン対策税制)」法令出版(編著)
「連結納税制度」法令出版(編著)
「組織再編成をめぐる包括否認と税務訴訟」清文社(編著)
「会社分割実務必携」法令出版(編著)
「株式交換・株式移転 実務必携」法令出版(編著)
「解散・清算 実務必携」法令出版(編著)

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