コラム

第二十四回目の専門家コラムは、日本税制研究所の代表理事であり、税理士である朝長英樹先生に執筆していただきました。朝長先生の略歴を文末に掲載させていただきます。 今回のコラムにおいては「同一の者」・「一の者」・「他の者」の解釈について取りまとめていただいております。ご参考にしていただければ幸甚です。

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「同一の者」・「一の者」・「他の者」の解釈
日本税制研究所
代表理事/税理士 朝長英樹
2011/11/15

 法人税法においては、特に組織再編成に関係する規定の中に、「同一の者」、「一の者」や「他の者」という用語が多く用いられています。

 これらの用語に関しては、その用語自体の意味内容に疑義はありませんが、これらの用語を用いた制度において、これらの用語で示される対象者の範囲が現行の規定どおりでよいのかという制度上の疑問、現行の規定においてこれらの用語で示される対象者の範囲をどのように捉えればよいのかという解釈上の疑問や実際にどのようにして広範に及ぶ対象者を捉えるのかという実務上の疑問が存在している部分がいくつかあります。

 周知のとおり、法人税法2条10号の「同族会社」の定義においては、株主等に「政令で定める特殊の関係のある個人及び法人」(注)を加えて持株割合を判定することとされていますが、この株主等に加える者(以下、「親族等」といいます。)を「同一の者」、「一の者」や「他の者」に加えるのか否か等の疑問が生ずることとなっているわけです。

(注) 法人税法施行令4条(同族関係者の範囲)においては、上記の「特殊の関係のある個人」について、1項各号で「株主等の親族」等を掲げており、上記の「特殊の関係のある法人」について、2項各号で株主等に支配されている「他の会社」等を掲げています。

 以下、これらの用語に関してそれぞれ疑問があるものの使用例を挙げて解説を行い、その後、「親族」の範囲に関して所見を述べることとします。

1.法人税法施行令4条の3第2項2号の「同一の者」

 法人税法施行令4条の3(適格組織再編成における株式の保有関係等)においては、条文見出しのとおり、適格組織再編成における株式の保有関係等について定めていますが、その2項2号は、次のとおりです。

「 二 合併前に当該合併に係る被合併法人と合併法人との間に同一の者による完全支配関係(当該合併が無対価合併である場合にあつては、次に掲げる関係がある場合における当該完全支配関係に限る。)があり、かつ、当該合併後に当該同一の者と当該合併に係る合併法人との間に当該同一の者による完全支配関係が継続すること(当該合併後に当該同一の者を被合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には当該合併後に当該同一の者と当該合併法人との間に当該同一の者による完全支配関係があり、当該適格合併後に当該適格合併に係る合併法人と当該合併に係る合併法人との間に当該適格合併に係る合併法人による完全支配関係が継続することとし、当該合併後に当該合併に係る合併法人を被合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には当該合併の時から当該適格合併の直前の時まで当該同一の者と当該合併法人との間に当該同一の者による完全支配関係が継続することとする。s)が見込まれている場合における当該合併に係る被合併法人と合併法人との間の関係


合併法人が被合併法人の発行済株式等の全部を保有する関係
一の者が被合併法人及び合併法人の発行済株式等の全部を保有する関係
合併法人及び当該合併法人の発行済株式等の全部を保有する者が被合併法人の発行済株式等の全部を保有する関係
被合併法人及び当該被合併法人の発行済株式等の全部を保有する者が合併法人の発行済株式等の全部を保有する関係 」

 上記のとおり、この「同一の者」に関しては、この者が個人である場合にも、その者の親族等を含む旨の定めは設けられていないわけですが、この者が個人である場合に、その者の親族等を含めないということになると、例えば、夫婦でそれぞれ50%ずつの株式を持っている二つの法人が合併をするというときには、その合併は「50%超のグループ内の組織再編成」として適格組織再編成に該当する余地がない、ということになります。

 この「同一の者」に関しては、法令の規定の正しい解釈ということになると、この者が個人の場合であってもその親族等を含めることとはならないわけですが、組織再編成税制の基本的な考え方からすると、本来は、この者が個人の場合にはその親族等を含めることとするべきであると考えられます。

 このため、できるだけこの「同一の者」に個人の親族等を含める方向で解釈をするのが適当と考えられます。

 幸いなことに、この「同一の者」に関しては、上記のとおり、「による完全支配関係」という用語が続けて用いられているため、「同一の者による完全支配関係」をどのように解釈するのかと立論することが可能です。

 もちろん、「同一の者」の解釈を「同一の者による完全支配関係」の解釈に置き換えたとしても、法令の規定の正しい解釈という点では、個人の親族等を含めるのか否かという問題が解決するわけではありませんが、全く取り付く島がない、というわけではない状態となります。

 結論を申し上げると、この「同一の者による完全支配関係」に関しては、この者が個人である場合には、その者の親族等を含めた完全支配関係と解するのが適当であると考えます(注)。

(注) 詳細に関しては、『詳解 グループ法人税制』の問18の解説を参照して下さい。次の「一の者」に関しても同様です。

 ただし、合併が非適格である方が有利であるというケースに関しては、非適格合併として処理を行うことが出来ないのか、あるいは、適格合併として申告を行ったものについて非適格合併として更正を行ってもらうことができないのかといった問題が残ることとならざるを得ません。

2.法人税法施行令4条の3第2項2号イの「一の者」

 上記1において引用した法人税法施行令4条の3第2項2号イにおいては、「一の者」という用語が用いられており、これにも、この者が個人である場合にその親族等を含む旨の定めは設けられていないわけですが、これに関しても、上記と同様に、組織再編成税制の基本的な考え方からすると、本来は、この者が個人の場合にはその親族等を含めることとするべきであると考えられます。

 しかし、この「一の者」に関しては、上記の「同一の者」とは異なり、個人の親族等を含めると解釈するための手掛かりとなるものが全く何もない状態となっています。

 このため、この「一の者」に個人の親族等を含むと解釈する余地はないと言わざるを得ません。現に、「一の者」に個人の親族等を含む旨の定め(法令4の2(1)・(2))が存する中で、その旨の定めがないものについても個人の親族等が含まれるとする解釈を採ることは、流石に困難であると考えます。

3.法人税法57条の2第1項の「他の者」

 法人税法57条の2(特定株主等によつて支配された欠損等法人の欠損金の繰越の不適用)の1項各号列記以外の部分は、次のとおりです。

  「 内国法人で他の者との間に当該他の者による特定支配関係(当該他の者が当該内国法人の発行済株式又は出資(自己が有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額の百分の五十を超える数又は金額の株式又は出資を直接又は間接に保有する関係その他の政令で定める関係をいい、政令で定める事由によつて生じたものを除く。以下この項において同じ。)を有することとなつたもののうち、当該特定支配関係を有することとなつた日(以下この項において「支配日」という。)の属する事業年度(以下この項において「特定支配事業年度」という。)において当該特定支配事業年度前の各事業年度において生じた欠損金額(前条第二項又は第五項の規定により当該内国法人の欠損金額とみなされたものを含むものとし、同条第一項の規定の適用があるものに限る。以下この条において同じ。)又は評価損資産(当該内国法人が当該支配日において有する資産のうち当該支配日における価額がその帳簿価額に満たないものとして政令で定めるものをいう。)を有するもの(内国法人のうち各連結事業年度の連結所得に対する法人税を課される最終の連結事業年度終了の日において第八十一条の十第一項(特定株主等によつて支配された欠損等連結法人の連結欠損金の繰越しの不適用)に規定する欠損等連結法人(以下この条において「欠損等連結法人」という。)であつたものを含む。以下この条において「欠損等法人」という。)が、当該支配日(当該欠損等連結法人にあつては、政令で定める日。以下この項及び次項第一号において「特定支配日」という。)以後五年を経過した日の前日まで(当該特定支配関係を有しなくなつた場合として政令で定める場合に該当したこと、当該欠損等法人の債務につき政令で定める債務の免除その他の行為(第三号において「債務免除等」という。)があつたことその他政令で定める事実が生じた場合には、これらの事実が生じた日まで)に次に掲げる事由に該当する場合には、その該当することとなつた日(第四号に掲げる事由(同号に規定する適格合併に係る部分に限る。)に該当する場合にあつては、当該適格合併の日の前日。次項及び第三項において「該当日」という。)の属する事業年度(以下この条において「適用事業年度」という。)以後の各事業年度においては、当該適用事業年度前の各事業年度において生じた欠損金額については、前条第一項の規定は、適用しない。」

 この「他の者」にも、その者が個人の場合にその親族等をどのように取り扱うのかということに言及した定めは設けられていません。

 このため、仮に、親が100%の株式を保有する法人の株式の全てをその子が買い取ったとすると、その100%の株式の移転は親族等の関係にない者同士の間の移転と同様となり、法人税法57条の2の規定の適用を受ける可能性が出てきます。

 親が子に法人の株式を売ったらその法人の欠損金の繰越しができなくなることがあるというようなことは、誰も考えていないと思われますが、法令の規定上は、子が親から株式を買っても他人から株式を買っても違いがない状態となっているわけです。

 誰も気付かなければ、平穏無事に過ぎていくこととはなりますが、今後、問題が顕在化しないという保証はありませんので、このような問題が存在していることを知っておくことは、重要です。

4.「親族」の範囲

 上記1から3までは、個人には親族等を含めるべきであるという観点に立って論を進めてきましたが、この親族等に関しては、そもそもその範囲が広すぎるという根本的な問題が存在しています。

 法人税法においては、周知のとおり、「親族」に関しては、民法の定めに拠ることとしており、6親等内の血族と3親等内の姻族としています。民法と法人税法のいずれにおいても、この「親族」の定義は、明治時代から変わっていないわけですが、大家族の下で家督相続が行われる明治時代と核家族化が進んだ現在とでは、家族のあり方が大きく変わっています。現在では、自分の全ての「親族」の姓名を正確に知っている者がどれだけいるのかという疑問さえ生じてくる状況にあります。

 特に、平成22年度改正により、親族の範囲の如何によって課税関係が変わる場面が一挙に広がることとなったわけですが、この平成22年度においては、法令の規定上、12親等も離れた者がそれぞれ株式を保有する法人同士が一つのグループを形成するものとしてグループ法人税制の適用を受けるといったことともなっています。

 平成12年度の有価証券・デリバティブ取引・ヘッジ取引に関する改正、平成13年度の組織再編成税制の創設、平成14年度の連結納税制度の創設は、いずれも実態に即した税制度を創るという観点に立って行われてきたものであり、租税立法においては、このような観点は、常に必須の非常に重要なものとなります。

 実態に即した税制度を創るという観点からすると、この法人税における「親族」の範囲の見直しは、現在、最も喫緊の課題となっている、と考えます。

執筆者紹介

略歴

1982年4月
東京国税局入局
1982年4月-1995年7月
成田・京橋税務署、東京国税局調査部において、主に法人税調査・審理に従事
1995年7月-2003年7月
財務省主税局において、金融取引に係る法人税制の改正(2000年)、組織再編成税制の創設(2001年)、連結納税制度の創設(2002年)などの改正を主導
2003年7月-2006年7月
税務大学校勤務、税務大学校教授を最後に退官
2007年3月-
日本税制研究所代表理事
2011年4月-
朝長英樹税理士事務所所長

主な著書

「企業組織再編成に係る税制についての講演録集」日本租税研究協会
「日本型連結納税制度の基本的な考え方と法令等の概要」日本租税研究協会
「公益法人税制」法令出版(共著)
「精説 公益法人の税務」公益法人協会(共著)
「リース税制」法令出版(編著)
「国際的二重課税排除の制度と実務 -外国税額控除制度・外国子会社配当等益金不算入制度-」法令出版(編著)
「会社合併実務必携」法令出版(共著)
「グループ法人税制」法令出版(編著)
「外国子会社合算税制(タックス・ヘイブン対策税制)」法令出版(編著)
「連結納税制度」法令出版(編著)
「組織再編成をめぐる包括否認と税務訴訟」清文社(編著)
「会社分割実務必携」法令出版(編著)
「株式交換・株式移転 実務必携」法令出版(編著)
「解散・清算 実務必携」法令出版(編著)

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